「Toilet Seatって、日本語でなんて言うんだろう?」
日本発のAmazon Primeシリーズドラマ『The Benza』は、そんな単純な疑問から始まった。最初は短編映画として生まれて、それが今ではWebシリーズとしてAmazon Primeシリーズで配信されている。
プロデューサーはアメリカ人のクリス・マッコームス。日本で俳優・モデルとして活動しながらキャリアを進めるにつれ、自主制作映画も手掛けるようになった。
プロデュース、監督、主演を務めるアメリカ人俳優のクリス・マッコームス
『The Benza』は、主役級のキャストが外国人で構成されていて、全編を通してほとんど日本語で演じられている。外国人同士が日本語で会話していると驚かれることが多い日本では、かなり特殊な作品だ。
日本は民族・文化の面からみても単一的といわれるが、これが在日外国人が直面する多くの問題につながっている。クリスのような日本の芸能界で活動する外国人にとっては、特にそうだ。
昔とくらべて観光客や日本に住む人も増えたとはいえ、外国人の存在は、まだまだ日常では当たり前とは言いにくい。そのため、日本の芸能界においても、外国人タレントはあくまで「外国人役」といったような限られたチャンスしか与えられず、しかも特定のステレオタイプを演じることを求められることが多い。
こうした日本のメディアに登場する外国人タレントに対する見方を克服することこそ、クリスが自身でプロデュース、そして脚本の執筆をすることを決めた理由のひとつだった。
『The Benza』の前にも、彼と彼の自主映画制作チーム「Tokyo Cowboys」は数々の短編映画を制作し、国際映画祭で多くの賞を受賞してきた。しかし『The Benza』は特に大きなヒット作になった。
当初は短編映画として作られた『The Benza』だが、「嘘予告編」が盛り込まれていて、すでに続編への含みは持たされていた。完成後はすぐに様々な映画祭での上映が決定し、国内外問わず多くの映画祭で多数の賞を受賞した。
その中でも「Seoul Webfest」では2つの賞を受賞、計6部門ノミネートされるなど大きな成功になり、これを受けて続編としてのシリーズが作られることが決まった。
とはいえ、問題は予算面だった。「Tokyo Cowboys」は、ボランティアグループであり、ほとんどのキャストやスタッフは無報酬で参加している。しかし、1話20分の作品を6話撮影するのは安くはない。「Tokyo Cowboys」は、投資やスポンサー、上映会のチケットの売上を資金に充てたほか、キャスト陣もチャンスをつかむためにポケットからお金を出した。
最終的に、120分以上になるスケールの映像を、わずか200万円で制作することができた。
撮影は、2018年の10月から12月にかけて行われた。初の上映イベントは2019年の4月に行われ、120人以上の観客を動員した。さらに、Amazon Prime Videoとの契約を結び、『The Benza』は、日本、アメリカ、イギリスのAmazon Prime会員であれば見ることができる。
現時点における「Tokyo Cowboys」の目標は、シーズン2を作るために十分な資金とファンを獲得することだ。その目標も『The Benza』の評判を見る限り、夢物語ではないだろう。
“The Benza”
東京のアパートでルームシェアをして暮らす2人の外国人、クリスとカイルはトイレの前で頭を抱えていた。 目の前には真っ二つに壊れている「便座」。どうして便座が壊されたのか、そもそも「便座」は日本 語で何というのか?どうやって元に直せばいいのか? 座り心地のいい快適な便座を取り戻すための2人の旅が始まる。
Amazon Prime Video
Amazon Prime Video “The Benza”
Tokyo Cowboys公式サイト
https://www.tokyo-cowboys.com/
(文・翻訳:Masaya/編集:Kaori)