ダンサー・モデル・俳優・マルチエンタティナーとして、長年日本で活躍をしてきたスティーブン・A・ヘインズさん。来日のきっかけ、日本での芸能活動、美のカリスマトレーナーへの転身、そしてスティーブンが語る「美しさの定義」とは。最終回は日本に長く住むスティーブンだからこそ見えている日本のダイバーシティの現状や、これからの夢について伺いました。
映画「息子のままで、女子になる( 英題:You Decide)」に込めた想い
全ては私の大切な友人であり、ヘアメイクアップアーティストで僧侶である西村 宏堂さんから始まりました。
宏堂さんは、この映画の主人公であるサリー楓さんが出場したミスインターナショナルクイーンコンテストのヘアメイク担当でした。宏堂さんが楓さんを私に紹介してくださり、楓さんから私のウォーキングレッスンを受けたいと電話がありました。それが楓さんとの出会いのきっかけでした。
★映画「息子のままで、女子になる」( 英題「You Decide」)
NetflixやAmazom Prime Videoなどで配信中です!詳細はこちら→https://www.youdecide.jp/
英題「You Decide」の由来
“You Decide” という英題には意味があるんです。
私はある日楓さんに、「自分のことを美しいと思っているか?」と尋ねてみました。ミスコンに出場するわけですから、自分の美しさに自信がないとか自分が美しいと思わないのであればステージには立てません。
そしたら彼女はこう答えました。
「You decide.」
その答えがとても衝撃的で、心に残りました。他人に自分の美しさの判断を委ねてきたということに、私は驚きを覚えたのです。
本音で語ってくれた楓さんのお父様
その後、彼女の最初のレッスンを終えた時に私は直感で、ウォーキングレッスンだけでは終わらせたくないと思い、楓さんにドキュメンタリー映画を製作したいと相談しました。楓さんは”笑い者にはなりたくない”、”有名にはなりたくない”という2点を条件とし、承諾してくれました。
私は友人で映画を撮っている杉岡太樹さんに、この新しいプロジェクトを手伝って欲しいと相談しました。はじめはあまり乗り気でなかった太樹さんですが、とにかく楓さんに一度会ってほしいと説得したところ、会った直後にはもうカメラは回りはじめていました。
このように私の友人や周りの人達のサポートがあり、このドキュメンタリー映画の撮影がスタートしました。今回の映画で一番注目してほしいところは、楓さんのお父様です。日本人は本音を言わない人が多いですよね。でも楓さんのお父様はカメラの前でご自身の思うことを本音で隠さず語ってくださいました。
世界中の映画祭に出品、そして受賞!しかし・・・
映画が完成し、私達は世界中のあちこちの映画祭に出品していきました。ですが大変残念でショックなことに、唯一私達の作品が受けつけてもらえなかった国がありました。
それは、この日本でした。
自分がいるこの日本が、作品を受け入れてくれなかった。なんて残念なことだろうか…本当にショックでした。しかしながら、ニューヨーク、ロサンぜルス、スウェーデン、タイ、カナダの映画祭では賞を受賞することができました。何かのきっかけ作りができれば、と思っていただけのプロジェクトでしたが、幸運にもこの映画は私の想像を遥かに超える結果をもたらしてくれました。
人間同士、格付けはやめよう
先日、世界的に有名な写真家のレスリー・キーさんとGAPがコラボしたプロジェクト「THIS IS ME」 のPVの振り付けを担当させていただき、こちらもとても多くの反響がありました。ダイバーシティなプロジェクトで、SDGsや人権、色々なことが関係しています。本来であればそのようなことは問題提議する必要がない、ごく自然のことであるはずなのです。性別や肌の色など関係なく、私達は一つになるべきで、人間同士の格付けはやめなければなりません。みんな同じ人間なのです。
それから私は称賛されることは好きではありません。もし私を称賛してくれる人がいたとしたらそれは素直に感謝しますが、私の隣にいる人や周りにいる人も称賛してくださいね。
世界初!プラスサイズのビューティーコンテスト「Today’s Woman」開催
幸いにも私は今まで本当に様々なコンテストに携わらせていただき、たくさんの美しい女性達を見てきましたが、バックステージだったり、観客やヘアメイク・スタッフだったりと、ステージ以外のところでもたくさんの美しい女性達に出会いました。このバックステージ側にいる彼女達こそ脚光を浴びるべきじゃないか、と自然に思い始めたのがこのコンテスト開催のきっかけです。そして自然の流れで開催に向けて準備が進み、結果として私の期待以上のイベントとなりました。
年齢にとらわれない自分らしさに注目
コンテストには北海道、富山、大阪、九州、沖縄など、日本全国から94名の応募がありました。コロナ禍もあって、その中から出場者を31名に絞りました。そして年齢制限は儲けずに、Sophisticated Class (20-39才)と Elegant Class(40才-) の2つのクラスに分けました。
年齢制限を設けなかったのは、本当は挑戦したいと思ってくれた人がいても、年齢が理由でチャレンジ出来なくなってしまう恐れがあると思い、その事態を避けたかったからです。やりたいことは年齢に関係なくやるべきだし、やめようと思ったら年齢に囚われることなく、自分のタイミングでやめればいいのです。
全ての人に対して思いやりの気持ちを持つこと
私達は全ての人に対して平等であるべきです。全ての人に対して、思いやりの気持ちをもつことがとても大切です。
もし今日私が誰かを見下すようなことがあれば、明日は誰かが私を見下していると思います。今日あなたは上機嫌かもしれませんが、他の誰かは落ち込んでいるかもしれません。これは巡りまわることです。だから私達はお互いを見捨てることなく、思いやりの気持ちを持って見つめあって行くべきなんです。そう思ったからこそ、このコンテストを開催すると決めました。
★プラスサイズコンテストToday`s Woman
公式サイト→https://www.todayswoman.com/
内に秘めた日本人の心を開きたい
私は長年日本に住み、本当に沢山の素晴らしいことを経験してきました。日本はとても安全で、子供が1人で電車に乗ることができますよね。来日当初は本当にびっくりして、「パパママはどこ?」って心配してしまいました。日本の電車のシステムもすごいですし、満員電車で人と人があんなに触れあっているにもかかわらず、事件や問題などが起きることが少ないことにも関心します。
ただ、日本人が自分の感情をあまり表に出さないことにとても驚きました。そしてそれは私がとても気になっていることでもあります。
今後自分のレッスンやワークショップ、会話などを通して、その内に秘めた日本人の心を開いて行きたいと思っています。隣に住む人のことを知らない日本の人、多いですよね?日本人がもっと心を開いてお互いにフレンドリーになったなら、もっと素晴らしい国になると思います。偏った一部の仲間とだけではなく、いろんな人との繋がりを大切にしていけたら、ご縁ももっとつながっていくと思います。みんなでつながって、みんなで楽しくいきたいものです。
すべての人に笑顔を!
私には夢がたくさんあります。OMG, SO MANY!その中でも一番の夢は、すべての人を笑顔にすること。私がみなさんを笑顔にすることができたら、夢が叶ったということです。希望を持ち続けていれば、夢は実現できると信じています。
すべての人に笑顔を!
(TEXT: Steven A Haynes)