決断をためらわず、
人生を切り開いていこう!
フランス出身のロイック・ガルニエさん。30歳の時に平凡ながらも安定したフランスでの生活から離れ、将来のために飛躍を求めて日本にやってきたそうです。元々舞台や演技の勉強をしてきたロイックさんが日本のエンタメ業界に入り、新たな挑戦を始めてから15年。母国フランスを飛び出して”外国人”として暮らす日本での生活のことや、今後の目標や俳優を目指す人へのアドバイスなどについてお話しを伺いました。
思いがけず、ギリギリのタイミングでニッポンへ!
フランスでは舞台や演技の勉強をしながら、カフェのウェイターとして長年働いてきて、生活は順風満帆でした。でも僕にとっては平凡で退屈な日常でしたので、ふと自分の将来を考えた時に『僕はこのまま何も成せないんじゃないか』という思いを抱き悶々としはじめて、いつからかこの日常から離れたいと思うようになりました。
そんな時に、知り合いのアーティストから韓国で行われる展示会に招待されて韓国に行く機会がありました。とてもいい刺激を受けたため、再び韓国に行くことを決意し、その時に初めて日本にも遊びに行きました。そしてフランスに帰国した時に、これからはどうしようかとビザのことなど色々調べていたところ、日本にワーキングホリデービザで渡航できることを知りました。当時僕はすでに30歳。ワーキングホリデービザの年齢制限ギリギリだったので、迷わずに決断をして日本に飛び立ちました。僕は何か特別に日本が大好き、とかアニメが大好き、とかいうわけでもなかったので、何故日本に来たのかと聞かれると・・・とても不思議な導きだったと思います。
人生を変える出会い
右も左もわからずな状態ではじまった日本での生活でしたが、当時フランス人の友達のお兄さんが東京に住んでいて、本当に色々と助けてもらいました。そして演技経験があり演技に対する情熱も燃やしていた僕は、来日してすぐに東京のありとあらゆるフリーランスのモデル事務所に登録しに行きました。それと同時に生活費を稼ぐべく、フランスレストランで働き始めました。食品の運搬業の仕事も掛け持ちではじめ、朝から晩まで働きはじめました。フランスでの生活と似たような日常になってきていた頃に、たまたま女優の高泉淳子さんと出会い、舞台出演のお話をいただきました。その稽古が始まるのをきっかけに、僕は全てのアルバイトを辞めて俳優業に専念することにしました。そこからモデル・俳優として様々なメディアに出演させていただき経験を積んできました。高泉さんとの出会いは、僕の人生を変える素晴らしい出会いでした。
日本人はとても丁寧!でも失礼!?
自己の存在意義を見出した日本
日本で生活を始めて驚いたことがあります。
日本人はとても丁寧で親切で、電車に乗る時も礼儀正しくみんなが並んで乗るけど、電車のドアが開いた途端に押し合いへし合いになり、人が変わったように失礼になる(苦笑)これはとても驚いたことです。あと、どこにでもお手洗いがあるのにもびっくりしました。フランスでは無料で利用できるお手洗はなかなかないし、とにかくお手洗を探すのが大変。なかなか見つかりません。だからパリの街が臭うわけですね!(笑)
来日して15年になりますが、この15年は色々なことがありました。
特に、ビザの問題。ワーキングホリデービザの後は、何度か観光客として日本や韓国に遊びにきました。その後日本語学校に通うために学生として再来日しました。でも日本語を勉強しながらも「なんで僕は日本語を勉強しなければならないのか?」「自分はなんで日本にいるのだろう?」と自問するようなことがよくありました。その理由は、日本で自分に子供が生まれた時にわかりました。子供の誕生が日本に導かれたことと、僕の存在意義を見出してくれました。将来がどうなるかわかりませんが、僕はきっとこのまま子供が大きくなるまでは日本で生活していくのかも?あと10年くらいはいるかな?
ドラマ「リバーサルオーケストラ」ヨーゼフ役に抜擢!
ここ数年は子育てが忙しくて、モデル・俳優のお仕事をほとんど受けることができませんでしたが、子供の成長とともに僕自身も成長し余裕が見えてきたところで、今回のドラマのオーディションの話をいただきました。オーディションでは、リラックスして自分らしさを見せられたと思います。あとは”ケセラセラ”の精神で自分を信じて身を任せて臨み、結果受かったのでとても嬉しかったです!
でも長い間演技のお仕事から離れていたので、忘れた感覚や勘を取り戻すのは大変でした。
トランペットは8歳の頃に習い始めましたが、きっかけは何だったか全く覚えていません。とてもうるさい子供だったので、トランペットを吹いてもっとうるさくしてやるぜー!というノリだったかも(笑)そこから音楽学校にも通いはじめ、ドラムやギターも学びました。そんなトランペットのご縁が今回のヨーゼフ役に結びつくことになるとは、夢にも思いませんでした!
改めて思い返すと、日本のドラマ制作の現場にいた時、これは本当に現実の世界なの?と、とても不思議な感覚になったのを覚えてます。僕のようないちフランス人が、周り全てが日本人で、日本語で、日本のやり方で行われている日本のドラマの現場に出演しているという現実は、いまだに信じられない気持ちになります。コロナ禍でもあったので、関係者のみなさんと十分にコミュニケーションが取れなかったのは残念でしたが、監督、キャスト、スタッフの皆さんはとても優しくて、本当に楽しい現場でした。
日本で “俳優” として活躍できる機会がもっと増えたら嬉しい
今後も、本当はもっともっと日本で俳優の仕事をやりたいと思っています。今回の「リバーサルオーケストラ」のような役付きで出演するチャンスがあったらもっと嬉しいですが、”外国人” であることでハマる役が来る機会は、なかなか少ないと思います。そして単に「”外国人” が欲しいです!」というお仕事よりも、外国人役者達が自然に受け入れられて活躍できる場が今後も増えていってほしいです。でもそのためには日本語力が絶対に必要ですよね。日本語のセリフが少なかったとしても、制作現場はどっぷり日本語の世界だし全ては日本語で進行されるから、僕ももっと日本語の勉強を頑張ります!
Be yourself! Make a choice! Don’t hesitate!
僕は人にアドバイスができるような成功者ではありませんが、日本でモデル活動をしたいと思っている人たちへ、とにかく日本語を学んでみてくださいと伝えたいです。日本にいるのだから日本語を学んだ方がいいです。言いたいことを伝えられるくらいにはなればいいと思います。
また、勇気を持って決断をすることも大切で、自分らしさを忘れずに諦めずに意志を貫いていって欲しいと思います。オーディションは何度行っても決まらないことがほとんどかもしれません。それでも自分らしく自然な姿で望んでいけばいいと思います。特にテレビCMはイメージが大切なので、それにハマらなければ決まらないのは仕方のないことですが、オーディションは数をこなすことで経験を積むことになるので、自己投資と思ってためらわずに挑戦してみて欲しいです。
僕が「リバーサルオーケストラ」という日本のドラマに出演したことが、日本のエンタメ業界に少しでも影響を与えたのではないかと信じています。そしてこれからは日本でももっと外国人役者達が自然に受け入れられて、素晴らしい作品が作られていったら、とても嬉しいです。
(TEXT: Loic Garnier)