演技は必須? モデルがオーディションに挑むためのポイントとNG集

MODEL’S STEP

「書類選考が通って、オーディションに呼ばれた!」
でも、オーディションってどんなことをするのでしょう?

まずは基本的な流れの紹介にくわえ、マネージャたちが実際に見聞きした、”冷や汗もん”のNG集、失敗エピソードまで大公開。

この記事のミソは、ファッションモデルとしての話だけではないということ。
モデルの仕事は、CM撮影、ドラマや映画の出演など、多岐にわたります。
いつ何時、どんなオーディションに呼ばれてもいいように、ぜひ心に留めておいてください。

外国人モデル事務所「株式会社フリー・ウエイブ」代表・高橋睦実の、モデルとして成功するための「モデルバイブル」。

第9回は、オーディションについてのお話です。

オーディションの前には書類選考がある

「A企業のTVCMの撮影がしたい。年齢は20代くらいで、白人女性1人と、黒人男性1人で、ダンスのできる方を探しています」

事務所には、日々こういった仕事の依頼がやってきます。
依頼を受けると、マネージャが数多くのモデルの中から見合った人材をピックアップし、クライアントに提案をします。

このときに必要なのが、コンポジットです。
いくつかの写真と、スリーサイズ、靴のサイズなどが書かれたプロフィールシートのようなもので、所属している事務所が作成します。

これを見たクライアントが、イメージに合っているかを想像し、書類選考を行います。
そして書類選考をパスした人だけが、オーディションに呼ばれるのです。

つまりコンポジットが良くなければ、オーディションにさえ行けないということ。
写真の出来映えはかなり重要です。
これについては、またべつの機会にお話しましょう。

一般的なオーディションの流れ

オーディションの日時や場所は、事務所から教えてもらいます。
もちろん、遅刻は厳禁です!

指定されたものがあれば持参し、「ブック」も持っていきます。
髪が長い人は、ヘアゴムも持参してください。

「ブック」とは、過去に出演した作品の写真などをファイリングしたもので、「自分がどれだけ変化のバリエーションがあるのか」をアピールするものです。
多くの場合は事務所が作成し、モデル自身が管理して、オーディションに持参します。
終了後に返却してもらえるので、繰り返し使えます。

仕事によっては必要ないときもありますが、ファッション系の仕事であればほぼ必須です。
最近ではiPadをブック代わりにするモデルもいるようです。
その場合は、バッテリーの充電はフルにしていきましょう。

服装の指定があればその通りにします。
指定がなくても、「お母さん役」や「ビジネスマン役」など、役柄が決まっている場合は、それに相応しい服装や髪型、メイクで来てください。
持っていないアイテムはマネージャに相談を。

ぜひ、クライアントがイメージをしやすいように配慮をしましょう!
これで合格の確率もぐんとあがります。

もちろん、セリフがあれば、必ず覚えてきてくださいね。

なお、会場での着替えは最小限にしてください。
着替えのためにトイレを使う人が増えると、迷惑がかかってしまいます。
水着であれば、洋服の下に着てくるなど、最小限で済むように準備をしてくればスマートです。

ワンポイント高橋

会場に着いて、歩きやすい靴からヒールに履き替えるモデルもいますよ!

①オーディションシートを記入する

会場に着くと、番号が書かれた「オーディションシート」が配られます。

スタッフが顔と全身のポラロイド写真を撮影して、オーディションシートに貼り付けてくれます。
シートには、事務所名、氏名、年齢、スリーサイズ、主な出演歴などを自分で記入します。

セリフやストーリーが描かれた「絵コンテ」が渡されることもあるので、待ち時間の間にイメージトレーニングをしましょう。

マネージャが同行していれば、オーディションシートの記入も、イメージトレーニングもサポートしてくれます。

注意してほしいのは、「絵コンテ」やセリフは、機密情報ということ。
「絵コンテ」を撮影したり、SNSに書いたり、第三者に漏らすことは、絶対にNGです!
重大な契約違反になるので、気をつけてください。

オーディションそのものも極秘です。
企業名を出して「オーディションがあった」と書き込んでしまえば、その企業が新商品を出すことや、何かしらのPR活動が行われることなどが他社に知られてしまいます。

さて、番号や名前を呼ばれたら、いよいよオーディションルームに入ります。
1人で入ることもあれば、他の人と入ることもあり、場合によりけりです。

マネージャが同室を許されれば、一緒に入って、PRや通訳など、ケアをしてくれることもあります。

②ブックを渡し、挨拶と撮影をする

ここからは、あくまで一例です。
オーディションによって違いがあるので、だいたいの流れとして参考にしてくださいね。

オーディションルームに入ったら、挨拶をして、スタッフにブックを渡します。

まずはビデオカメラの前で、オーディションシートを胸のあたりに持って、自己紹介をします。
「Hello,My name is XXXX. I’m from FreeWave. 」
こんなふうに、所属事務所と名前を言いましょう。
もちろん日本語ができる人は日本語で。場合によっては英語の方が良いこともあります。

自己紹介を終えたら、近くにいるスタッフにオーディションシートを渡します。

次に、顔と全身の撮影に入ります。
正面、横顔、後ろと撮影するために、ゆっくりとその場でまわります。
顔のアップと全身と、同じように2回撮影することが一般的です。

髪が長い人は、手で纏めたり、持参したヘアゴムで結ぶこともあります。
ビデオにしっかりと横顔を映すことが大事です。

このとき、スタッフは、カメラに映っているあなたを見ています。
カメラを通してどんなふうに見えるのか? それを知りたいのです。こちらを見ていないと思っても、安心してください。

③課題・アクティング(演技)

次はアクションの指示があります。
CMの撮影の場合、「ショッピングしているところを演じてください」というように、演技を求められることが多いです。

セリフについては、事前にわかっている場合もあれば、オーディションルームに入ってから教えてもらえることもあります。
外国人が日本語でセリフを言う場合は、事前に教えてくれることが多いです。

「カメラに向かって誘惑するように踊ってください」
「大笑いしてください」
など、どんな指示が来るかわかりません。
緊張するかもしれませんが、シャイにならず、ぜひ思いきって演じてください!

できるだけ演技のバリエーションも欲しいです。
「笑う」にも、様々な笑いがありますよね。悲しく笑うのか、爆笑するのか、微笑むのか。
色んな引き出しを見せられると、最高です!

まれに、オーディションに監督が同席していることもあります。
その場合は細かい指示が来ることがあるので、思う存分アピールしましょう。

よくあるのが、複数人でオーディションを受けている場合、影響を受けてしまうこと。
他の人がやったことが正解とは限りません。
誰の真似でもなく、自分の考えたようにやってみましょう。
中には、他人の演技を見ないという人もいますよ。

④オーディションが終わったら

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
こんなふうに、スタッフから終了の合図が出ます。

すべてを終えたら、笑顔で挨拶をして、ブックを返却してもらい、退室します。

明るい挨拶は最後まで大事です。
「ありがとうございました! よろしくお願いします!」
こんな挨拶と一緒に一礼するといいでしょう。

次のオーディションで同じスタッフに会うことがあれば、「そういえば、いい子だったな」と好印象を思いだしてもらえます。次に繋げるチャンスです!

⑤合否の連絡を待つ

オーディションを終えたら、あとは連絡を待つのみです。

めでたく合格した場合は、事務所から次の指示が来ます。
残念ながら不合格だった場合は、連絡が来たのち、確保していたスケジュールをリリースし、次のオーディションに備えましょう。

合否の連絡がないうちは、スケジュールはキープしてください。

たとえオーディションの出来に満足いかないとしても、「どうせ受からないし」と自己判断して、予定されていた本番日に他の予定を入れるのは厳禁です。

容姿にも気をつけてください!
髪型や体重、ヒゲなど、見た目もキープします。
クライアントは、オーディションに来たあなたの見た目で、合否を決めています。
本番が1ヶ月先であったとしても、同じ状態で迎えなければいけません。

たとえば本番当日に、ヒゲがなくなっていたり、ロングヘアだったのがショートヘアになっていたり……こんなことになれば、大問題です。
撮影ができなくなったり、大きなクレームになってしまいます。
スタイルを変えたいと思っても、合否がわかるまでは我慢です!

ヒゲは毎日変わるものなので、コントロールが難しい問題ですね。
以前、本番直前にべつの仕事の現場で剃られてしまって、大問題になったケースも見ました。

オーディションで、「ヒゲを剃れますか? 髪を切れますか?」と聞かれても、勝手に答えるのはNGです。
「前後の仕事との調整があるので、マネージャと確認します」と伝えましょう。

とくにフリーランスで引き受ける仕事は、十分な注意と確認が必要です。

オーディションに受からなくても、ネガティブにならないで!

もしもオーディションに受からなかったとしても、決してネガティブにならないでください。

「全力でやったのにダメだった!」
「完璧にできたと思ったのに!」
「わたしはモデルとしてやっていけないんだろうか?」

誰だって初めはこんな気持ちになるものです。
とくに、絶対に射止めたいと思った仕事ならなおさらです。

でも、仕事は、パフォーマンスの上手さや容姿だけで決まるものではありません。
クライアントにとって、「想像していたイメージに嵌まっているかどうか?」が決め手です。

よく、マネージャに、落選の理由を尋ねる人がいますが、これにはどうやっても答えることができません。
100人以上の参加者がいるオーディションも多いので、監督やプロデューサーがひとりひとり教えてくれることはないのです。

学業の試験では、100点をとれば合格です。
モデルの世界はそうはいきません。
たとえ完璧なパフォーマンスができたと思っても、イメージが異なれば選ばれない。
それが、この世界の難しいところです。

ワンポイント高橋

売れっ子のモデルも、10回行って1回、受かるか受からないか。
たとえ10回落ちたとしても、「次!」と気持ちを切り替えていきましょう!

マネージャは見た! オーディションのNG集

ここからは、マネージャが実際に見た、オーディションのNG集をご紹介します。
これをやったらアウト! ぜひ参考にしてください。

時間

「たまに会場で「次のオーディションがあるから早い枠にして」とワガママをいうモデルがいます。しかも言うのはだいたい同じ子なんですよ。オーディションも撮影も時間がきっちり決まってるから一人の都合じゃ動かせない。遅刻ももってのほか!」(事務所マネージャ/10年目/女)

ワンポイント高橋

もし他のオーディションがある場合は、事前にマネージャに伝えてください。オーディション担当会社と調整をします。

ネガティブ発言

「待っている間に、他のモデルや事務所の悪口を言ったり、ギャラの話をしている人がいました。英語だと思って油断している人もいるけど、クライアントにも外国語がペラペラの人、いっぱいいますよ! キャスティングディレクターや監督など、通りかかることも多いです! いつでも見られている意識を持って!」(事務所マネージャ/20年目/女)

 

服装

「ダンスをするオーディションで、足を上げるって伝えてあったんです。それなのにミニスカートとハイヒールで来たモデルが! パンツ丸見えです! ちゃんと踊れる格好で来て!」(事務所マネージャ/10年目/女)

「会場まで自転車で来て汗だく。勘弁してくれ……。」(事務所マネージャ/9年目/男)

「学校の先生役なのに、真っ赤な口紅で来た子が。イメージを考えて!」(事務所マネージャ/9年目/男)

「オーディションに合う服を持ってないなら一言相談してほしい。事務所で用意することも可能です。私はこれでいいんだと自己判断しないでね!」(事務所マネージャ/3年目/女)

 

事前準備

「忘れ物がないように、チェックリストを用意するといいですね」(事務所マネージャ/20年目/女)

「そもそも何のオーディションかわからない人とかたまにいる。何しに来たの? ってなりますよ」(事務所マネージャ/14年目/男)

「事前に覚えておかなきゃいけないセリフを、まったく覚えてこなかった。冷や汗もいいとこだよ!(涙)」(事務所マネージャ/14年目/男)

「バレエ踊れます! って言ってたのに、本番でまったく踊れなくて恥ずかしかった」(事務所マネージャ/6年目/女)

「すっぴんじゃないとダメって伝えてたのに、ばっちり化粧で来た。もし来る前に撮影があってメイクが落とせない場合などは、事前に教えて!」(事務所マネージャ/2年目/女)

 

管理

「けっこう前ですが、競合商品のCMに出ているのに、他社商品のCMのオーディションに来ていた人を見たことがあります」※(事務所マネージャ/5年目/女)

「昔の話だけど、ビザが怪しいなあ、と思う外国人モデルがオーディションに来ていた」(モデル/10年目/女)

「びっくりしたのが、オーディションに彼女や子どもを連れてくる人。子どもならまだ事情がある場合もあるから理解できるけど、恋人はNGでしょう! 外で待っててもらって!」(事務所マネージャ/3年目/女)

「オーディションルームで自分が踊っている動画をSNSにアップしていた! すぐに消したとはいえ、ありえない〜! 別事務所から来ていましたが、うちからはもう二度と依頼しません」(事務所マネージャ/10年目/女)

(参考:競合・プロモーション・仕事を選べる? 専属モデルを目指すべきメリット4点!

その他

「さばを読みすぎないで!(笑)オーディションシートに10も下の年齢を書いた人が(笑)。確かにモデルにとっては、実年齢より、いくつに見えるかが大事。なんで年齢を聞くんだ? という気持ちもわかるけど」(事務所マネージャ/15年目/女)

「シャイにならないで! オーディションでは100%の力を出せるように頑張って! チャンスは一回きり。やり直しはできません」(事務所マネージャ/15年目/女)

オーディションには全力で挑もう

オーディションの流れとポイント、把握できましたか?
最低限のルールを守れば、あとは思いきりパワーを発揮するのみです!

次回は、オーディションに受かって、いよいよ撮影へ!
モデルが本番で気をつけるべきことをお伝えします!

オーディションについてもっと知りたいということがあれば、ぜひ質問をお寄せください! 他のことでもお待ちしております!

高橋 睦実(Mutsumi Takahashi)

株式会社フリー・ウエイブ代表。茨城県・水戸市生まれ。1989年アメリカ法人「スター・ダンス・コネクション」日本事務局代表に就任。1992年、外国人ダンサーやモデルをマネージメントする有限会社フリー・ウエイブを立ち上げ、2003年に株式会社に改組。業界屈指の大規模外国人モデル事務所になる。趣味はジャズを歌うこと。猫好きで動物愛護団体への協力もしている。

President of Free Wave Co., Ltd.
Born in Mito, Japan. In 1989, appointed as the Head of Japan office of Star Dance Connection. Established Free Wave Co., Ltd. which represents and manages international dancers and models later becoming one of the top international model agencies in Japan. She likes jazz and cats. She is also working towards saving animals from cruel treatments