「モデルになりたい!」
そんな夢を抱いている人は、たくさんいるのではないでしょうか。
しかし、
「どうすればモデルになれるのかわからない!」
「モデルになりたいけど自信がない!」
「モデルってどんな仕事だろう?」
「外国人モデルは日本で成功できるだろうか?」
など、疑問と不安を持っている人が少なくないと思います。
今回より「どうすればモデルとして日本で成功することができるのか」というノウハウを、外国人モデル事務所フリー・ウエイブの代表、高橋睦実がご紹介します。
日本の業界で仕事をしていくための心構えから、業界の仕組みやルール、事務所探しのポイント、そしてモデルとして成功する秘訣など。
業界27年目に突入した老舗モデル事務所の代表だからこそ、お伝えできることがたくさんあります。
この業界についての正しい知識を備えておけば、実際に働くときに、なにも恐れることはありません。
この「モデルバイブル」をじっくりとお読みいただき、あなたの才能を磨いて、モデル人生の花を咲かせましょう。
なぜプロのモデルは、フリーランスではなく事務所に入るのか?
今回はまず、モデルへの第一歩として「モデル事務所」についてご説明します。
モデルには、事務所に所属する道と、フリーランスで活動する道と、2つの道があります。
これまで「モデルバイブル」では、モデル事務所に所属していることを前提にお話ししてきました。
なぜなら、現在でも、プロのモデルは事務所に所属する人がほとんどだからです。
では、なぜプロのモデルは事務所に入るのでしょうか?
それは、モデル事務所の役割を見ると明らかです。
モデル事務所の主な業務は、2つあります。
2)モデルのマネージメントをする
これらは当たり前のことのように見えますが、具体的にはどんなことをしているかご存じない方も多いのではないでしょうか。
それぞれ詳細を説明していきます。
モデル事務所の役割(1)TVCMや雑誌、イベントなど、モデルが出演する仕事を取る
TVCMや雑誌などの仕事は、ダイレクトにモデル個人に依頼が来ることはほとんどありません。
なぜなら、大きな仕事になればなるほど、多くの会社や人が関わるために、契約は複雑になり、責任も大きくなります。
万が一のことがあった場合に、責任能力の弱い個人よりも、企業のほうがきちんと対応をしてくれる。そう考えて、クライアントは、モデル事務所に仕事を依頼するのです。
以下は、TVCMを例にした、一般的な制作におけるキャスティングの流れと、業界の企業関係です。
TVCM制作に関わる企業(例)
①スポンサー
②広告代理店
③制作会社
④キャスティング会社
⑤モデル事務所
最初に、商品を宣伝したい「①スポンサー」がいます。
スポンサーは「②広告代理店」に依頼して、全体の広告戦略を決めてもらいます。
広告の中にTVCMがあった場合、制作は「③制作会社」に発注されます。
彼らは言うまでもなく、より良いキャスト(出演者)を探しています。
本来なら制作会社がキャストを選びたいところですが、制作の現場は多忙を極めることが多いので、何百人もの候補者にスケジュールを確認して、オーディションを繰り返すといったことはできません。
そこで、効率よくキャストを探すために、制作会社は「④キャスティング会社」と手を組みます。
キャスティング会社は、作品やイメージについてしっかりとヒアリングし、制作会社の代わりにベストなキャストを探します。
いわば、制作会社にとってキャスティング会社は、外部部隊、パートナーのような存在です。
ここから、キャスティング会社は、よりたくさんの候補者を集めるために、複数の「⑤モデル事務所」にオーディションの依頼をかけます。
そしてモデル事務所は、条件に合う所属モデルを探し、スケジュールを確認し、クリアできれば書類選考やオーディションへと送り出します。
いかがでしょうか。
TVCMにモデルがキャスティングされるまで、これだけのプロセスがあることに驚かれた方もいるのではないでしょうか。
そして、
このプロセスと会社の数だけ、業務契約や、機密保持契約も結ばれます!
責任の所在を明確にする ~業務契約・機密保持契約~
たとえば、
「出演モデルやタレントに不祥事があってCMが放送できなくなった……」
などのニュースを見聞きしたことがありませんか?
一般的に、TVCMなどの広告には、高額な金額が費やされます。
もしも出演者がスポンサー企業や商品のイメージを損なう行為をしたり、契約違反などをした場合は、訴訟に発展しかねません。
万が一そんなことになった場合、個人のモデルでは、責任を負えない可能性があります。
モデル事務所は、モデルがきちんと出演を果たし、契約を遵守する責任を負っています。
安心のためにも、キャスティング会社は、業界の知識と経験があるモデル事務所を通して、モデルを起用するのです。
この業界は、それぞれの会社が、長年の経験や付き合いで築いてきた信頼関係で成り立っているといっても過言ではありません。
誰もが知っているような大物タレントになれば、例外的に広告代理店から直接キャスティング依頼が来ることもありますが、基本的には、個人のモデルがスポンサーや代理店と直接契約を交わすことはありません。
そういった業界の通例もあり、プロのモデルは、仕事のチャンスを増やすために事務所に入るのです。
クローズドな世界で信頼があるからこそ、新人にもチャンスがある
そもそも、大きな仕事であればあるほど、オーディションの情報さえ一般公開されないものです。
まれに、Webや雑誌で公募のオーディション情報が出ていることがありますが、ほとんどが新人発掘やキャンペーンなどであり、わたしたちがよく目にするTVCMなどのオーディション情報は、まず公開されません。
なぜなら、キャストのイメージや作品のコンセプトなどを公開してしまえば、
競合他社に、広告戦略を知られてしまうことになるからです。
オーディション情報そのものが、機密情報なのです。
すでにキャリアと信頼関係のあるモデル事務所のように、
機密情報の管理を徹底してくれる保証がないと、オーディション情報さえもらえません。
このように、業界はとてもクローズドな世界ですから、フリーランスやキャリアのない個人が食い込むのは、なかなか厳しいのが現実です。
逆にいえば、クローズドな世界で信頼されているモデル事務所に所属することは、大きな強みになります。
キャリアのあるモデル事務所には、契約の面だけでなく、モデルの質についての信頼感があります。
たとえば、個人や新人モデルは、どれほど努力しても技術やマナーなどの担保は誰もしてくれません。
しかし事務所に所属していれば、「この事務所が推薦するなら大丈夫だろう」と、まずはクライアントからの信頼を得るという第一難関を突破し、オーディションへのチャンスが掴めるのです。
モデル事務所の役割(2)モデルのマネージメントをする
2つめの主なモデル事務所の業務は、モデルのマネージメントです。
マネージメントとは何をするのか、大まかに説明します。
クライアントとの契約チェックや交渉
モデル事務所は、いわばモデルの代理人です。
たとえば、撮影時間が大幅に延びた場合のギャランティの交渉や、撮影現場で怪我をした場合の対応、また、業務契約などで、モデルが不利にならないように契約書のチェックを行います。
要望など、クライアントに直接言いづらいことも、事務所を通して伝えることでモデルの印象を悪くしません。
これらの交渉は、いわゆる「業界の常識」を踏まえたうえでないと成立しません。
もちろん、契約書の作成なども代理で行います。
書類作成が苦手なモデルや、日本語がわからない外国人モデルにとっては、自分の仕事に集中できるというメリットもあります。
交渉は、
事務所やマネージャーの知識と経験値が問われるところです!
コンポジットの作成や、オーディションや現場でのサポート
すべてではありませんが、オーディションや撮影現場には、マネージャーが同行し、サポートします。
外国人モデルの場合は、日本語の通訳業務を行うこともあります。
マネージャーとは、キャリアアップのための相談をしたり、服装や髪型などの相談もします。
現場での振るまいについての指導も行います。
仕事のために必要なコンポジットも、事務所が作成します。
●コンポジット参考記事:
「外国人モデルだけじゃない。日本の芸能界で成功するための基本ルール 〜フィジカル編〜」
ギャランティの支払い立て替えと保証
仕事のギャランティは、クライアントから直接モデルに支払われるのではなく、事務所を通して支払われます。
出演料は、一般的にクライアントの決めた支払いサイトで支払われます。
即日支払いがあるケースはほとんどありません。
また、例えば支払い元が倒産してしまったなど、そもそも支払いをしてもらえない状況になる可能性もあります。
事務所は、そういったときのギャランティの立て替えや、支払いの保証をしています。
ビザの申請
外国人モデルの場合は、日本で就労可能なビザや、資格外申請などの取得を行います。
このビザの管理をなおざりにして問題が起きた場合、スポンサー企業やクライアント企業との間で、大問題に発展してしまいます。
制作側が安心してキャスティングを行うためにも、ビザの知識についても、信頼のおける事務所に所属したほうがよいでしょう。
モデルが事務所に入ることは、圧倒的に有利になる
以上、モデル事務所の主な業務と役割について、説明しました。
・モデルの仕事は、個人ではなくモデル事務所に依頼が来る
・モデル事務所は、モデルの代理人になる
これまでの話を大きくまとめるとこうなりますが、もしもあなたがモデルとして活躍したいのなら、モデル事務所に入ることは、圧倒的に有利であることはすでにおわかりかと思います。
モデルという肩書きは、誰もが自由に得られるものです。
国家資格などがありませんので、「今日からモデルです」と名乗れば、事務所に所属していなくとも、誰でもモデルになれるのです。
しかし、昨今、そうした個人やフリーランスが増えてきた一方で、契約についてのトラブルや不祥事など、耳にすることも少なくありません。
クライアント企業が倒産してしまったり、クライアントの素性がわからないまま仕事を請け負ってしまった結果、出演料が支払われないまま逃げられてしまったなどの悲しい話も聞こえてきます。
そういった危険に身をさらさないためにも、大きな仕事をしたいと願うプロのモデルは、しっかりとマネージメントをしてくれる事務所に所属しています。
これからモデルになりたいと考えている方は、フリーランスで働くのか、事務所に入るのか、いちど熟考してみてください。
「事務所に入ったほうが有利なのはわかった。じゃあ、どういう事務所にいけばいいの?」という方に、次回の記事では、モデル事務所の探し方や、選び方をお伝えします。