「選ばれるモデル・タレントになる!」ためのTipsを、あのスティーブン・スピルバーグ監督作品のキャスティングも手がけた、業界歴32年の大御所「Kuze Casting」代表の久世様にお話を伺いました!
本格的にモデル・タレントとして活躍していきたいと思っているけど、写真選考が通らない、オーディションに呼ばれるけど仕事に結びつかない等々、せっかく事務所に登録したのになかなか仕事が決まらないお悩みを持つ方は必見!どうしたら【選ばれるモデル・タレント】になれるのか、他では聞けないキャスティング直伝の大変貴重なお話が満載です。今後の皆様のタレント活動の参考になれば嬉しく思います。
第一回目は「コンポジット写真」についてお話しを伺いましたが、写真選考を通過したら多くの場合はオーディションが待ち受けています。そこで第二回は「オーディションに受かる秘訣」についてお話しを聞いてみました。
<登場人物>
マネージャー:Masako
回答者:Kuze
オーディションを受ける時の準備と心得
ポイント①オーディションも仕事と理解していること!
Masako:
オーディションは、10回受けても仕事が決まらない人もいれば、1回目で決まる人もいます。巡り合わせもあるので状況は様々ではありますが、共通してオーディションに受かる秘訣、アドバイスがあれば教えていただけますか?
Kuze:
まず大切なのは、オーディションに参加する時は、きちんとした準備をすることです。
選考に外される確率を出来るだけ下げておくことが仕事につながります。例え今回決まらなくても、次回の確率はとても高くなると思います。
またオーディションにギャランティは発生しませんが、「オーディションも仕事」と理解している方が決定します。オーディション会場においても撮影現場においても長い待ち時間であっても、「これは仕事である」ということをきちんと理解して行動している方に仕事がきます。
そして当たり前ですが、自分の感情の管理、体調の管理、髪・肌の管理、スケジュールの管理、競合の管理、ビザの管理(外国籍の人の場合)がきちんと出来ている人には、引き続きお仕事が決定していきます。
”きちんと管理出来ている”というのはどういうことなのか、と言うと、例えば「今日は風邪気味ですが、仕事までには治します。」と言われても、万が一オーディション現場で風邪を移されると、クライアントを含めたその場の全員が困ってしまいますよね。体調の悪い時は、オーディションも参加は控えてください。体調管理は、非常に大切な仕事のひとつです。
ポイント②オーディションの役柄になりきる!
Kuze:
受ける役柄を考えて、オーディションにその役柄の雰囲気に合った服装をしてくるというのも、かなり効果的です。
例えば厳格な教師役のオーディションにセクシー系の服装で参加するとか、ビジネスマン役なのにスーツを着てこないなど、演技力に自信がある人は非常にもったいないとしか言えないのですが、やはりそういった場合、仕事は決まりません。
ファッション系の女性モデルであれば、最低パンプスとビキニも常にバッグに入っているくらいの準備をしていてほしいです。男性であれば、似合うビジネススーツ一式は持っていてほしいです。サイズも色も似合う自分のものと借りたものでは、結果は全然違うのです。「オーディション現場に着てきたものがとても似合っていたので、それを本番に着てきてほしい」と言われることがあります。ぜひ準備しておきましょう。
またオーディション会場や撮影現場では、何が起こるかわかりません。セットのペンキがついてしまったり、紛失や盗難にあったりすることもゼロではありません。服、小物、靴全て高価なものでそろえるのは避けましょう。何かあった場合、関わったすべての人が対応に困る場合があります。万が一の事態になっても大丈夫な服、小物、靴を持参するようにしましょう。
先日ある歴史上の人物のオーディションがありました。
2時間以上の長い待ち時間でしたが、ずっと一箇所に座ったまま絵コンテのセリフを覚えながら穏やかに待っている方がいました。その人の雰囲気自体が本当に歴史上の人物に似てるなぁと思ったのですが、話をしたら、ネットでその歴史上の人物のことをしっかり調べてきていたのです。そして洋服や雰囲気も調べてきて、自分が持っている洋服の中で雰囲気が一番近いこの服を着てきた、とおっしゃていました。そして、やはりその人に仕事が決まりました。
こんな事例もあります。
演技も性格もスタッフ全体への印象も本当にとても良かった、でも役のイメージではなかったので仕事は決まらなかった。そんなオーディションの後しばらくしてから別件発生、その時のキャスティング担当も監督もその方のことを覚えていて、別件のオーディションに指名で呼ばれ、そしてその別件の仕事が決まったのです!
このような形でお仕事が決まることは、芸能界ではそんなに珍しいことではありません。
「オーディションは会場に着いた時から始まっている」と思って、選考に臨んでください。
ポイント③オーディションはカメラの前だけではありません!
Masako:
オーディションに参加するにあたって、気をつけておいたほうがいいことなどあればお伺いできますか?
Kuze:
演技が必要なオーディションは、始まって5分~10分で終了、ということはまずありません。必ず時間に余裕を持って臨みましょう。
会場に到着したら受け付けをして、順番を確認し、写真を撮ってもらい、オーディションシートを書く。まずはここまでを一人でスムーズに出来るようにしましょう。オーディションシートは、5分程度でシンプルに見やすく書けるように練習してほしいです。
内容は名前、所属、最新のサイズ、国籍、最近の撮影や仕事のタイトルを1、2つ、そして特技。これだけの内容を見やすくきれいに、できれば日本語で書くこと。5分程度では書けないほどの伝えたいことや多くの仕事歴がある場合は、きちんとしたコンポジットとプロフィールを事前に用意して、オーディションシートに添えて提出すること。ブックより、そちらの方が効果的な場合もよくあります。
またオーディション時に、自分で感情をコントロールできないほど不機嫌な状態であれば、その日は参加しない方がいいです。演技だけ、カメラの前でだけどうにか頑張れたとしても、すでにそれまでに接した人々があなたの態度を見ていますので、まず仕事は決まりません。特に受付や控え室でビザを見せる際、写真を撮られる際、ここまで失礼な態度をするかなぁという方がいます。例えば「場所がわからない」と、マネージャーではなく会場に直接電話をしたり、混んでる状況を見て思い切り不機嫌な様子で「待ちたくないので、順番を早くしてください」などという方がいらっしゃいます。キャスティングとしては、同じことを撮影現場でされたら仕事になりませんので、その時点で選考から外します。
オーディション時にカメラの前で何度も何度も演技をリクエストされることは、いろんなパターンの演技が出来ると期待されてのことです。決してダメだから、ではありません。カメラ前で何度も何度もというのは、撮影現場でもよくあることです。楽しんで、いろんな演技を出来る限り見せてほしいと思います。そのためにも体調管理、メンタルの管理はとても重要です。もちろん演技の幅を引き出しをできるだけ多くしておくことも重要です。
オーディション現場には、いろんな方々がいます。オーディションに来たモデルを、いろんなシーンで見ています。何度も言うようですが、オーディションはカメラの前だけではありません。
オーディション会場に入ってから出るまでがオーディションです。
こういったことを念頭に置いておいてオーディションに臨んでみてください。チャンスが広がる事をお祈りしています。
Masako:
久世さん、貴重なお話をありがとうございました!
第三回は「どんな人が絶賛される人?リピート指名される人?」についてお話しを聞きました!
次回更新をおたのしみに!
キャスティング久世/Kuze Casting
キャスティング・ディレクターの久世理恵子氏は、スティーブン・スピルバーグ監督の「太陽の帝国」に日本人俳優キ
ャスティング・アシスタントとして参加。また「ビルマの竪琴」(1985年・市川崑監督)や「漂流教室」(1987年・大林宣彦監督)などの邦画にも外国人のキャスティングおよび現場通訳として参加。1989年からはキャスティング・クゼとして活動を開始し、広告を中心にTVCF、グラフィック、ショー、プロモーションビデオやナレーションなど、日本人から外国人まで幅広いキャスティングを手掛けて現在に至る。
キャスティングクゼHP